西武の若手を見守るブログ

埼玉西武ライオンズの若手や二軍についての備忘録です

平沼翔太という謎

交流戦中に中村剛也選手の代わりに昇格して、呉念庭選手が試合中に負傷したことから出場機会を得るという、細い糸を手繰り寄せて一気に西武ファンの希望になった平沼選手。走塁中の故障で離脱したが、先ごろファームに復帰を果たしている。翌週のイースタン公式戦には出ていないのでまだ試し試しかも知れないが、ファンは一軍復帰が待ち遠しいことだろう。

 

さて、平沼選手もまた二軍成績はまったく奮わなかった。

なにしろ2022年の子猫では打率.159 出塁率.225 長打率.183 OPS.408である。

これが一軍昇格すると打率.235 出塁率.386 長打率.235 OPS.622へとジャンプアップ。ヒット8本はすべて単打なので長打率は低いが、そのぶん出塁率は打率からすると非常に高く、四死球は安打より多い9である。

 

西武ファンの中にはこれを以て「二軍成績は当てにならない」と思ってしまう人も多いようだが、過去の成績と見比べてみると、結論は「子猫時代だけおかしい」である。実は、今年の一軍成績は日本ハム時代と傾向的に一致するのだ。

 

特に移籍直前の2021年にファイターズ二軍では打率.215 出塁率.354 長打率.301 OPS.655である。長打を打っているぶんOPSは今年の西武一軍を抜くが、同じように出塁率の高さが光っている。

 

DELTAさんのデータを元に、過去からのアプローチの傾向を確かめてみる。

  • 空振り率は2年目からずっと一桁である。2021年の日本ハム二軍では驚異の3.5%。一軍では西武時代も含め7〜8%だが、2020年には一軍でも約5%を記録している。一番空振りしたのは2021年の西武一軍で15%を超えている。
  • よってコンタクト率はだいたい80%以上の数字を維持している。コンタクト率のキャリアハイは2021年の日ハム二軍での89.5%。奮わなかった2022年の西武二軍でも84%はコンタクトできている。一番低いのはもちろん2021年の西武一軍で65%。
  • そもそも振らない。2年目からのスイング率は一軍二軍とも約38%〜約43%に収まっている。スイング率がこの数字を超えたのもやはり2021年西武で、45%を超えている。
  • 振らない傾向にはあるものの、ボールゾーンを振らないわけではない。ボールゾーンのスイング率はだいたい20%台の後半であり、選球眼が良いとは必ずしも言えない。最もボール球を振らなかった年は2021年の日ハム二軍で18.5%、振ったのはこれも2021年の西武一軍で50%。

アプローチ的に見ると、キャリアハイが2021年日本ハム二軍、キャリアワーストが同年の西武一軍ということになる。もちろん西武一軍での打席はかなり少ないのだが、トレードされた瞬間に別の選手になってしまった感がある。真意はわからないものの、トレードをきっかけに「出塁する」選手から「打つ」選手にモデルチェンジしたいということだったのかも知れない。また西武というチームのイメージである「強く振ること」を意識した面もあるのかも知れない。

 

しかし、西武が平沼選手に求めたのは「強く振る」ことでなく、本人の持ち味を活かした「出塁する」ことだった。特に近い役割を果たしていた金子選手が負傷離脱してからは、ボールをよく見て四球を選ぶ、粘る、そして時に快打で塁に出る、といったしぶとい選手が少なくなっており、平沼選手がうまくはまった格好になった。また本人も、若くはあるがチーム内での立場が安泰でないことを意識したコメントを残しており、自分ができる役割をよくわかった上で打席に立っていたようだ。そうした覚悟が伝わってきたからこそ、ファンも平沼選手の打席に注目し、ボールをひとつ選ぶだけで興奮するまでに至ったのだろう。

 

平沼選手はなんとなく風格があるものの、25歳になったばかりの若い選手である。ここから伸びていくためには、持ち味である「見ること」と「打つこと」のバランスをどう取っていくかにかかっているだろう。ちなみに元チームの先輩近藤健介選手も、高校の先輩吉田正尚選手も、平沼選手よりスイング率も空振り率も数%低い。それでいて強い打球を放つことで球界屈指のアベレージヒッターとなっている。縁が深い2選手がこれからの平沼選手にとって良いお手本となるはずだ。

 

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